DEBU NOTE (デブ・ノート)
多美はちょっと太めが悩みの平凡な女子高生。 彼女はある日校庭に落ちているノートを拾った。 ノートの表紙には「DEBU・NOTE」の文字が。 ノートの中にはこう書かれてあった。 「このノートに名前を書かれた者は太る」 多美「キャハハ。何これイタズラ?バッカみたーい!!」 |
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多美「ほんのちょとだけ太めなのよ。」 |
多美が部屋で大笑いしていると 呼ばれてないのにジャジャジャジャーンと 太目の天使(悪魔)が現れた。 多美「あ、あなたは!?」 「ほほほほ。私の名前はエルサイズ。 エルって呼んでね。 そのノートに書かれてあることは本当よ。 そこに名前を書かれた者はみな太ってデブになるの。 さあ、このノートに名前を書いて周囲の女性を みーんなデブにしてしまえば あなたはデブ世界で唯一のスリムな女性になれるわ。 男の子にモテモテよ。 新世界の女神になりたくはない?」 悪魔のささやきだった。 |
多美は試しに兄の太郎の名前をノートに書いてみた。 恐る恐る台所に向かうとそこには パンパンにふくらんだ兄の姿があった。 多美「うわっ!!お兄ちゃん、ガリガリだったのに・・・・」 エル「どう?わかったでしょ。このノートは本物よ。」 多美「わかったわ。今日からこのノートは私の物よ。」 多美はクラスメートの名前をノートに書き始めた。 「ふふふっ。これで私はクラスで一番スリムな女♪」 |
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太郎「言っとくけどカメじゃないぜ。」 |
翌朝、多美が登校すると予想通り学校は大変な騒ぎになっていた。 クラスの女子が多美を除き皆突然に太ってしまったからである。 教室内はぎゅうぎゅう詰めになり後ろの席からは前が見えないほどだった。 クラスで一番スリムな女子になった多美は笑いがとまらない。 「あー愉快愉快!!みんなの私を見る目つきったら! いつも私のことちょいデブとか残念な子とか言ってた嫌味なA子も スタイルのいいことを鼻にかけてたB子も、いい気味だわ! ねえ、エル。ノートに書くのは知った人じゃなくても別にかまわないのよね?」 「もちろん。男でも女でも。TVに出てる有名人でも誰でも名前を書けばOKよ。」 「よしっ。気に食わない女優とか有名人とかかたっぱしから書いてやる!」 |
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家族全員太ったので ベッドに入りきらなくなり 身を寄せ合って眠る家族。 ギュウギュウ。 |
それから毎日多美はデブノートに名前を書き続けた。 学校が終わるとすぐ家に戻り部屋で深夜まで名前を書き続ける。 ノートはいくら書いてもページが尽きることはなかった。 一度手にするとそこに名前を書かずにはいられない このノートはそういう魔力を持っているようだった。 やがて街はどこもデブであふれかえり 多勢の人が突然太り出す怪現象も最初のうちこそ話題になったが 次第に珍しさも薄れあまり話題にのぼらなくなった。 肥満は健康のために良くないと言っていた学者たちも 自分がデブになってからは何も言わなくなった。 洋服業界はデブを「標準」の「Mサイズ」と改めるようになり 多美は自分に合う服を選ぶのが難しくなってきた。 そしてついに・・・・WHO(世界保健機構)はこれまでの基準を大幅に改め デブこそが最も健康で理想的な体格であると修正したのである。 |
怒りに震える 多美の母親。 泣き落としに かかる多美の 母親。 何も考えてない 父親。 |
多美の母は今日も機嫌が悪かった。 「多美!!ちょっと待ちなさい!!あなたご飯一膳しか食べてないじゃないの! たくもう、いまどきあなたみたいにみすぼらしく痩せた子どこ探してもいないわよ。 まるで何も食べさせてないみたいでママはどんなに肩身が狭いか・・・・ この前なんかうちの郵便受けにバナナが差し込んであったのよ 「お宅の栄養失調の娘さんに食べさせてあげて下さい」って手紙つきで。 もうもうママは恥ずかしくて穴があったら入りたかったわ。」 「それでそのバナナはどうしたの。」兄の太郎が茶々を入れる。 「テーブルに置いてたらパパが勝手に食べちゃった・・・・ってそういう話じゃなくて! いいこと?ご飯あと二膳おかわりしなかったら罰としておやつのシュークリームの数 3個から30個に増やすからね!!」 「ひぇぇぇ。それだけはご勘弁を!」多美は泣く泣くご飯を二膳おかわりした。 (しくしく。あとで腹筋の数増やさなくちゃ。ったく、あたしまで太ったら意味ないじゃん! それにしてもノートに名前を書かなくても自然に太ってるママって一体・・・・ この体質を受け継いでると思うと恐ろしいわ。) 多美は自分までデブにならないよう節制するのを忘れなかった。 |
数ヵ月後。多美の目の前にエルが現れた。
背中の羽まで増量中のエル。
エル「久しぶりね新世界の女神さん。」 多美「エル!!なんか前よりさらに太ったんじゃない?」 エル「わ、私のことはいいのよ。それより自分だけスリムでモテモテ1人勝ち作戦はどうなったの?」 「うん・・・それがね、あんまり幸せじゃないの。確かに最初の頃は楽しかったけど・・・・ いくら太ってもA子は彼氏がいてB子も毎日楽しそうにスイーツ食べてるし あたしは彼氏もできなくて痩せても誉められるどころかけなされてばっかりで それにあたしようやくわかったの。 美人は太っても美人だけどそうでない者は痩せてもそれなりなんだって。」 多美はデブ・ノートをエルに返すことにした。 エル「本当にいいの?所有権を放棄したら2度と持つことはできないのよ。」 多美「うん。あたし少しぐらいからかわれたって、やっぱりみんなと同じがいい。」 エル「最後に自分の名前を書くこともできるけど。」 「それはやめとく!」多美はきっぱりと否定した。 「美味しいもの好きなだけ食べて思う存分太れるチャンスだもん。大丈夫、あたしはママの子よ。 ノートに頼らず必ず自分の力で太ってみせるわ!!」多美は握りこぶしに力を入れた。 多美は母親の言う通りたくさん食事をとるようになり、少しだけ体重が増えた。 それからしばらくして・・・・ 学校で毎日クラスメートと楽しそうに過ごす多美の姿があった。 美味しいものを一緒に食べ歩いたりファッションの話に花を咲かせたりして楽しく過ごしていた。 多美「あ、この(激太っちょ)モデルの着てるワンピ可愛い♪」 A子「あ、それ多美ちゃんに似合いそう。」 B子「もう少し太ったらきっと着られるよ。」 A子「あたし(太って見える)補正下着売ってる店知ってるよ。」 多美「ホント!?どこどこ?教えてー!!」 鏡を見ながら服をとっかえひっかえし「どうやったら太って見えるか」に頭を悩まし ファーストフードで「一番カロリーの高い組み合わせ」を考えて注文したりするのは どれも新鮮で楽しいものだった。 |
いつもニコニコと明るい多美にはすぐ彼氏ができた。 和菓子職人を目指すモチモチ肌で太鼓腹の優しい彼は 痩せている多美のためにいつも自分の作ったお菓子を 持ってきてくれる。 「こんなのしかできなくてゴメンね。 洋菓子の方がカロリーが高くて太れるのに・・・・」 すまなさそうに言う彼に多美は極上の笑顔で答える。 「ううん。このハート型のおまんじゅうすっごく美味しいわ。 いつもありがとう♪」 多美は身も心も満腹だった。 |
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「ああもうめちゃめちゃ幸せだわっ!!!」 |
それから1年後。 多美は再び校庭でノートを拾った。 血の色のような毒々しい赤のノートの表紙には 「Death Note(デス・ノート)」と書かれてあった。 「何これ・・・・」 ノートをパラパラとめくる多美の目の前に 赤いドレスを着たうさんくさい悪魔が現れた。 「こう見えても悪魔デス(Death)!!ここに名前を書けば 嫌な奴を殺せるんデス!!早い者勝ちデス!!」 多美は3秒考えて「要らないっ。」とノートを放り投げた。 多美「あたし急いでるの。じゃあね。」 悪魔「えええっ!!!????」 |
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赤い悪魔の本当の名前は死神。 人類を混乱させ滅亡に導くのが目的で地球にやってきた。 「信じられないわ。こんな面白いもの要らないなんて。 こんなつまらないとこ出て別の惑星に行こうっと。」 死神は地球を去って行った。 実は多美は「デス・ノート」を 「語尾にデスがつく人間になる」と誤解しただけだったのだが 結果として幸せボケした多美のお陰で地球の平和は守られた。 |
「こう見えても悪魔デス(death)!! |