「新・キャバの惑星」

〜これまでのあらすじ〜
異次元の世界からワープしてきたクッキーママ。
彼女がたどり着いたのはこれまで住んでいた地球・・・ではなく
キャバリアが人間をペットとして飼う「キャバリアの惑星」だった。
驚いたクッキーママはペットとして飼われている腹違いの双子の姉の
香苗を救出するため相棒のクッキーパパとともにタミー家に向かった。
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その家の表札には「TAMMY」とだけ書かれてあった。
人間の女の子のイラストついた赤いステッカーが郵便受けに貼られている。
ペットとして人間のメスを飼っている目印らしかった。
「勝手にエサを与えないで下さい」という言葉まで書き添えられている。

クッキーママはため息をついた。
「ああ・・・。やっぱりおねいちゃんはタミーちゃんに飼われているのね。」
深夜にクッキーママはドアを激しくたたいた。
「タミーちゃん、美味しいおから入りさくさくクッキー作ってきたのよ。開けて!!」
すぐさまドアが開いて、主人のタミーが舌なめずりとともに顔を出した。
クーママはほんまにええ人やなあ。
タミーがばくばく食べているうちにクッキーママはすばやく部屋を見回し
ソファーでよだれをたらして寝ていた香苗を起こして外へ連れ出した。
「おねいちゃん早く!!クーパパが車で待ってるから!!」
訳がわからないまま香苗はクーパパの運転する車に乗り込んだ。

首につけられた無駄吠え(無駄話)矯正装置AHOSTOPがはずされ
香苗はようやく普通に会話ができるようになった。
「ど・・・どうしたの!?」
「どうしたのって、助けに来たのよ!このまま一生ペットとして暮らす気!?」
「え・・・別にいいんじゃないの?」
クーママ「(ガクッ!!!!)と・・・とりあえず、うちに行きましょう・・・。」

香苗はキャバリアの惑星が誕生したいきさつをクーママに説明した。
クーママ「へー。そうだったの・・。あれ?おねいちゃん、尻尾はどうしたの!?」
香苗「へっ!?ああ、あれはAHOSTOPとセットにして売られてるの。
   ほら、しゃべれないと嬉しいとか体調が悪いとかわからないでしょ?」
クーママ「なるほどねえ。センサーがついてるのかあ・・・。」

などと2人がしゃべっていると、いきなり周囲が明るくなり
3人が外を見ると車は何台ものパトカーに取り囲まれていた。
キャバの惑星ではペットである人間が主人のキャバの付き添いなしで
外に出ることは禁じられている。車を見かけた通行キャバが通報したらしかった。
クーママ&クーパパ&香苗
「ど、ど、どうしよう〜〜〜!!!!????」

その頃クッキー家では・・・・
「クーママとクーパパが脱走した!どうしようどうしよう」と大騒ぎになっていた。
えーらいこっちゃえーらいこっちゃよいよいよい〜♪
心配のあまり踊りだしてしまったクッキーの娘のんのん。
「ああ〜くまったくまった、えらいこっちゃ〜♪」

クッキー「あああ。どうしよう。交通事故にあってなきゃいいけど。
もしかして誘拐されたのでは・・・あの子達けっこう愛嬌者だから。
のんのん!てんてん!2人をクマなく探すのよ!!」
踊る大捜査キャバ隊?
急きょ編成されたキャバ捜索隊
のんレンジャー、クーレンジャー、てんレンジャー。

そのころクーママ達は・・・。

「逃げても無駄よ。あなたたちは完全に包囲されてるわ!!
おとなしく出てきなさい。あなたたちのお父さんやお母さんは泣いてるわよ。」
タミー2役に挑戦?
説得にあたる兵庫犬警のキャバ婦警。

逃れられないと観念したクッキーママ・クッキーパパ・香苗の3人は
車から降りてパトカーに乗りこんだ。
キャバ婦警が無線で連絡を取っている。
「捜索願の出されていた人間3名をたった今保護しました。
はい、1名はメスで推定8歳、あと6〜7歳のオスとメス1名ずつ、こちらは
つがいと思われます。」

3人は保健所に連れて行かれ、檻の中に収容された。
クーママ「おねいちゃん、私達どうなるの!?ガス室に送られたりしないよね!?」
香苗「それは絶対ないから安心して。でもたぶんこの後に裁判が待ってるはずよ。」
クーママ&クーパパ「そ、そんなあ〜〜!!!」

翌朝。香苗は飼い主のタミーが迎えに来て釈放された。
「裁判では私がきちんと証言するから大船に乗ったつもりで安心してちょうだい!!
あ、もうこんな時間!もうじきおやつタイムなの。ママが外で心配して待ってるから
今日はこれで帰るね。また明日来るから。じゃあまたね、バイバ〜イ♪♪」
香苗はいそいそと帰って行った。

クーママ「ママが待ってるって・・・・タミーちゃんのことだよね?」
クーパパ「ダメだありゃ。完全に身も心もペットになりきってる・・・・。」
大船に乗ったつもりどころか、笹船よりも危うい気がするクーママとクーパパだった。


保健所に収容されたクーママとクーパパは
初日に医師による健康診断を受けたあとは自由行動が許された。
朝と夕方にペット(人間用)フードが用意されおやつも与えられた。
2人はソファーに寝っ転がりTVドラマ「宮廷女犬タミチャングムの誓い」を見て
「そんなアホな!」とつっこんだり「世界の中心でワンと叫ぶ」を見て号泣したり
快適なケージ暮らしをしていた。

(某公共放送ドラマとは一切関係ありません)

クーママはおやつのわんこケーキに舌鼓をうっている。
「ねえこのケーキ美味しいね!!わんこ用だからちっこくて可愛くて
ひとくちサイズで食べやすい♪甘さ控えめだからクーパパにもいいよ!!
・・・・あれ?もう食べないの?」
クーパパ
「・・・・よくこんなときにパクパクとメシが食えるな。明日は裁判やぞ!!」
クーママ
「だからこそ明日に備えて食べるのよ。すいませーん、コーヒーお代わりー!!」
クーパパ
「血のつながりはないとはいえ・・・さすが姉妹だ・・・(ため息)」


そしてついに裁判が始まった。

約束どおり証言台に立った香苗はありのままを裁判官に伝えたが
それはクーママ達のためというより久しぶりにAHOSTOPをはずしてもらい
自由に思い切りおしゃべりできるのが楽しみだったようで
たびたび話が本筋から脱線しては裁判官にたしなめられたりして
予想以上に頼りにならなかった。

裁判官
「いきさつはよくわかった。しかしいかなる事情があったにせよ
ペットを逃がして危険にさらしてしまったことは重要な過失であり
飼い主はその責任を・・・・」

クッキー・のんのん・てんてん「えろうすんまへん!!!」

2人は次第に顔色が変わってきた。
クーママ「こっ・・・この裁判てもしかして・・・私達を裁くんじゃなくて・・・」
クーパパ「クッキー達を裁く裁判だったんだー!!!!」
裁判が始まったときから感じていた妙な違和感が何であるか気づいたとき
裁判はほとんど終わりに近づいていた。

クーママ達は勘違いしていた。
キャバリアが人間をペットとして飼うこの惑星では脱走した人間の責任は
飼い主であるキャバリアが負うのである。

責任者キャバのクッキー・のんのん・てんてん氏
「ごめんなさい監督不行き届きで。後でよーく言って聞かせますから・・・。」

「ちょっと、おねいちゃん!!どうなってるの、聞いてないわよ!!
クッキーたちはどうなるの、ひどい罰を受けるんじゃないよね!?」
クーママは香苗をつかまえて詰問した。
「え、えーと、最悪の場合は飼育権剥奪でクッキーちゃんたちがクーママ達を
飼育する権利を失って、2人は保健所で収容されたあと新しい飼い主キャバを
待つことになると思うけど2人まとめて引き取ってもらえなかった場合は
クーママとクーパパはそれぞれ別の飼い主のところに・・・・」
クーママ
「な、なんですって。い、いやよ、いやよ、絶対そんなの嫌!!
クーパパはともかくクッキー達と引き離されるなんて絶対にイヤー!!!!」
クーパパ「お・・・おいっ!?(汗)」

裁判官「静粛に!!意見があれば手続きを踏んでからにしなさい。」
クーママ「手続きって?」
香苗「キャバらしく尻尾をぶんぶん振って合図するのよ。」
クーママ
「そんな無茶な・・・あ、そうだ、おねいちゃん、付け尻尾貸して!!」
クーママは尻尾をぶんぶん振り回して叫んだ。
「お願いです、聞いてください、今度のことはみーんな私達が悪いんです。
クッキー達は全然悪くありません。罰するなら私達に罰を与えてください。
夜も遅くてみんな寝てたので起こすと悪いと思って書置きを残して出かけたんです。
どうかどうか、クッキー達を責めないで〜〜〜!!!!」


タミー「そうよ、クーママはいい人よっ。あんぱんもお菓子もくれたし!」

裁判長
「わかった。ペット達は愛情を持ってきちんと飼育されているようだ・・・・
よろしい、その言葉に免じて今度のことは水に流して無罪とする。
それで・・・代わりに罰を受けると言っていたが何か奉仕ができるかな?」
クーママ
「・・・はい、美味しいケーキを毎日作ってクッキー達に食べてもらいます。
今度のことで迷惑をかけたタミーちゃんにも・・・。」


クーママの代表作「マーブルブルケーキ」

クーパパ「えーと僕は・・・車を運転してクッキー達をドライブに連れて行きます!

リードにつながれ散歩させてもらっているクーパパ

裁判長「それでは閉廷・・・。」
クーママ&クーパパ「やったあー!!!!」
クーママ「これでクーのんてん達と離れずにすむのねー!!!」

勝利を喜び抱き合うのんのんとクーパパ。

「あ、それから・・・」帰りかけた裁判長が書類に目をやりつぶやいた。
「そちらのオスの去勢手術がまだすんでいないようだが・・・」
クーパパ「は!?」
クッキー「それでしたら先週すませました。」
クーパパ「え!?」
クッキー「先週昼寝してる間に・・・」
クーパパ「う、ウソだあぁぁぁぁぁ〜〜〜!!!!!」

クーパパはショックのあまり口から泡を吹いてぶっ倒れてしまった。




自分を犠牲にしても飼い主を助けようとしたクーママの行動は
傍聴席にいたキャバ達の涙を誘い、美談としてマスコミでも大きく取り上げられた。
キャバ婦人雑誌では特集が組まれペット雑誌にはインタビュー記事が載せられ
クーのんてん達はカリスマ飼い主としていっきに有名になった。

「おほほほほ!!いいえそんな、特別なことは何ひとつしておりませんのよ。
特に厳しいしつけなんかしなくても家族として愛情を注いでいれば
ペット達も自然とわかってくれるんじゃないでしょうか。
きっと自分も私達と同じ犬だと思い込んでいるんでしょうね。
これからも健康に気をつけておおらかに育って欲しいですわ。おーっほっほっほ♪♪」
カリスマ飼い主たち。
インタビューを受け飼い主として鼻高々のクッキー・のんのん・てんてん

こんなエピソードも・・・。
ポッキー&クッキー
「もちろん幼い頃は愛のムチとしてこれでお仕置きしましたけどね(^◇^)」


クーママは約束通りせっせとケーキを焼いたりお菓子を作ったりつまみ食いをしたり
ときにはお菓子持参でタミー邸に出かけ香苗とお茶を飲みながらうだうだ話を楽しんだ。
慣れてしまえばここの暮らしはなかなか快適だった。
ワンコと仲良く楽しく暮らすという意味ではこのキャバの惑星も地球も変わらない。
飼い主キャバが自分達の健康に気を配ってくれるし冬には役所からハガキが来て
インフルエンザ予防注射の接種にも連れて行ってもらえるのだ。
「ずっとこのままでも悪くはないわね♪」クーママは現状に満足していた。
ただ一人を除いては・・・・・。

クーパパ
「あ〜〜〜。俺はもうおしまいだあ〜〜〜!!!!
俺は飼い主でもなければ家のあるじでもない、ただの番犬・・・じゃなかった番人。
ただの男・・・いや、オスですらない・・・・はああああ(ため息)。
てんてん!!!いや、「てんこ様」と呼ばせてもらおう、てんこ様!!!
去勢仲間として、末永く仲良くやっていこうぜ、なっ、なっ、なっ!?」

こんなオカマにはなりたくない。。。
急にすり寄ってこられて困惑ぎみの飼い主「てんこ様」


忠義ペットのクーママはペット生活向上委員会を発足させ、月に2回はお茶会を開いて
メス同士で食ってしゃべってストレスを発散させるように定めてはどうかと提案し
無事承認された。同時にクーパパも「オスのために月1回のゴルフを」と提案したが
こちらは即座に却下された。

クーパパ「うううう・・・(T_T)どうせ俺なんか俺なんか・・・・(いじいじいじ)」

「困ったわねえ。すっかり負け犬根性が染み付いてしまって・・・可哀想に。」
可愛い我が子のためですもの。
不憫に思った飼い主「てんこ様」はクーパパの願いをかなえてやろうと思い
年に4回だけゴルフ惑星に行き好きなだけプレーできるよう働きかけた。
何しろ有名な「カリスマ飼い主てんこ様」の提案なので効果は抜群、
すぐさま承認を得ることができた。

「ありがとうごぜえますだ、神様仏様てんこ様あ〜〜一生ついてまいりますっ!!!」
ちぎれんばかりに尻尾を振るクーパパ。
嬉しさのあまり目から星が飛び出たクーパパ。

てんこ様の親心に感激したクーパパはキャバへの永遠の忠誠を誓い
年4回のゴルフを心待ちにしながら幸せに暮らしたのだった。
めでたしめでたし♪


完。