「宮廷犬キャバリアの城」への道 NO.2
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現金と引き換えに、キャバリアの仔犬は我が家の犬となった。領収書もなにもない。 こんなに簡単に手に入れていいんかい? 「八百屋で大根を買うみたいに」という表現があるけれどこの場合は・・・ 「本来ならお目にかかることもないはずの高貴なお嬢様を、お金にものをいわせて無理矢理 嫁にした成り上がり」のような気恥ずかしい心境である。(どっかのドラマみたいだ・・・) 使っていたパピーフードを少し分けてもらい、猫用のバスケットに仔犬を入れて家に連れて帰る。 クーンともキュンとも言わない。胸がドキドキする。ついに買っちゃったよー。 育て方は全然わからない。その日のうちに犬小屋を買って外で住まわせるつもりだった。 ブリーダーさんはそれは無茶だという。もう少し大きくなるまでは家の中で飼うようにと言われた。 昔、新ちゃん用に買った未使用のケージがあることを思い出し、これを犬のハウスにする。 食器や敷物などすべて猫のおさがりである。 仔犬は初めての夜もハウスの中であっさりおとなしく寝た。鳴かない犬だ・・・。 ![]() |
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英国宮廷犬だからプリンセス・ダイアナ・・・にすると美人薄命になりそうだからやめといて 仔犬の名前はタミーとダンナが命名。実は女の子だとは思っていなかった。 ブリーダーさんちで元気に犬舎の中を駆け回り壁に激突して脳しんとうを起こしたりする姿を 見た我々は男の子と信じて疑わなかった。 車に乗せて連れて帰る寸前に「女の子だから、仔犬が産まれたらうちに下さいね!」と言われ初めて「ええ〜〜!?」一瞬、もう1匹のキャバと取り替えようと思ったがこちらも女の子だった。 私はもう1頭の白っぽいほうのキャバリアが欲しかった。 が、ダンナが茶色の多いほうのキャバを希望。つい最近わかったことだけど、ダンナは「犬の背中は茶色が多い方がいい」という美学(?)の持ち主だった。 こういうしょうもないささいな理由から選ばれた子犬は「お買い得♪」と喜んだのも束の間、のちにさんざん病院のお世話になり、もう1頭買えるくらいの費用がかかってしまった。 |
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うちに来るなり食欲不振で点滴を受け、以後ケンネルコフ、血便、寄生虫、皮膚病、骨折による手術、入れた金具が神経を圧迫して再手術、などタミーはいろいろやってくれました。 特にケンネルコフ(咳)は本当にしつこく何ヶ月も続き、夜になると昼よりさらにひんぱんに咳き込むタミーを見ながら私はハウスの前に座り込んで頭を抱えた。 どうしよう、どうしよう、朝までずっと眠る間もないくらいにコンコンと苦しんでる。 ノイローゼになりそう。ああもう嫌だ、何で犬なんか飼っちゃったんだろう。誰だよ犬飼いたいなんて言い出したのは(私だよ!!)。あああ犬のいない世界に行きたい。。。。 当時事情があって2軒の動物病院に行っており、診断も指示もバラバラ。どうすりゃいいのさ! 私の混乱をよそにタミーは気持ちはいつも元気!いろんなものをかじり隙を見ては脱走し 骨折で手術した2日後には病院内を走り回り誰にでもシッポを振って大はしゃぎ。 手術の後に添え木をして安静にしなくていいのかと尋ねると「まあ大丈夫でしょう。 それにじっとしてる子じゃないですよ。」という獣医さんのお答え。(その通り・・・) 骨折と咳と皮膚病を同時に患い食欲がなく心配させたタミーはその後すっかり元気になり 食い意地のはった超オテンバ娘に成長した。 |
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ヘンな顔だと思っていたタミーは成長するにつれ鼻や胴がスルスルと伸び、ますますオモロイ顔になった。顔以外は毛も短かったことから私はひそかに「ヘビ女」「ウナギ犬」と呼んでいた。![]() ![]() 歩くのが大好きな私の散歩の友としてやってきたタミーは私の望み通り散歩が大好きな犬となり 雨の日も風の日も雪の日も一緒に歩いた。 散歩の気配を感じると玄関にすっ飛んで行き、リードをつけてもらうのももどかしく玄関ドアに体当たり。頭から突っ込むクセは仔犬の時と変わらない。 あまりにも喜ぶので私は足を捻挫した時も病気の時も散歩に出た。肺炎で入院を命じられたのを断り、自宅で安静を約束したにもかかわらず、検査の造影剤の副作用で吐きながら寒風の中を歩くという壮絶な散歩もあった。(何故にそこまでする・・・。) 生後半年くらいになればタミーに外で暮らしてもらおうと考えていたけれど、よく考えたらもうじき大人になって妊娠する可能性のある女の子を外に出しておくわけにはいかない! 警戒心ゼロで人なつっこいタミーを外に出しておいたら、誰かにひょいと連れて行かれるかもしれない。それ以外に、外で何かあってもまず「ワン!」とは鳴かない犬である。 タミーは「猫とどう違うんだ!?」というくらい、犬初心者の私にも違和感のない犬だった。 ずっとこのまま家の中で一緒に暮らそう。犬はその大きさにかかわらず室内で飼うべきだ! すっかり認識を改めた私。でも、外で飼うつもりでトイレの躾をしなかったのが悔やまれる(苦笑)。 |
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外飼いはやめたけれど少しは室外を自由に歩き回らせてやりたいと思い、裏にタミーのための運動スペースを作った。隣と裏の家に接する細い「く」の字型のコンクリート部分をタミーに開放。 脱走防止のため両端を犬小屋やゴミ箱などで塞ぎ、敷地外には出られないようにしてある。 お蔭で人間は容易には勝手口からは入れない。ニャンコだけがラクラク通行! 年に数回やって来られるガス・水道メーター検針の方は、まず手前のブロックをどけて犬小屋を手で押しながら少しずつ扉を開け、ひざまであるフェンスを乗り越え大きな切り株に足を乗せて植木鉢を移動しやっとたどり着けるという、大変申し訳ないことになっている。ごめんなさい・・・・。。 ![]() ![]() |
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タミーと散歩をしながら考えた。 猫と違ってヒモにつながれてはいるけれど、心はいつも猫のように自由にさせてやりたい。 行きたい場所に行けるよう、どこまでもつき合って歩いてあげよう。 飼い主の顔色など気にすることなく自由にのびのびとふるまい、嫌な時は心から嫌そうな顔をする 「ノーと言える犬」になって欲しい。 私がいないからって食欲をなくしたりすることなく元気に食べ、いざという時は私を捨てて自分だけ逃げる犬になって欲しい。犠牲になってくれる犬なんて嫌だ。 背中に哀愁なんか漂わない、いつもハッピーでマイペースな子になって欲しい、そう願っていた。 しかし・・・・ そんなことわざわざ望まなくとも、タミーはハナからそういう犬だった。 人の話なんか聞いちゃいない。底抜けに陽気でいつも楽しいこと、おいしいことしか考えていない。 猫よりも気まぐれで、人にかまわれず隅で一人で寝ているのが好き。 気が向いたときしか出迎えない。叱られてもへっちゃらだが誉められても無反応。 「ホンマに犬か!?」(ひょっとしてパー!?) 私はタミーのこういう性格がとても気に入った。私にはこういう子の方が向いているし気楽でいい。 のちに本で読んでわかったことだけど、愛玩犬というのはそもそもこういう猫的性格がある子が多く、「可愛がられて当然、愛されるのは当たり前」と思っているらしい。 私が描いていた「忠犬」イメージは相当古いものであった・・・・(笑)。 マイペースだけれどワガママでない、バランスのよさも理想通りで、キャバリアでよかった・・・。 |